2-3 現行制度との比較

現行の贈与税暦年課税制度と相続時精算課税制度のメリット・デメリッ卜を教えてください。

(1)暦年課税制度
メリット:基礎控除の110万円を毎年活用でき、相続開始前3年超の贈与財産は相続財産に加算されない。
デメリット:贈与金額によって最高50%(平成27年1月1日以後の贈与については55%)ーの税率が適用される。(税率が高い。)
(2)相続時精算課税制度
メリット:生前贈与の非課税枠2,500万円を超えた部分も一律20%の税率で済むので、マンションなどの収益物件を贈与すれば早くに子に収益を移転出来る。また、相続時に合算される価額は贈与時の価額であるため、将来値上がりが確実な資産には有効。
デメリット:贈与財産は相続財産に合算される。暦年課税秘度に戻ることができない。

(1)適用対象者

≪1≫暦年課税制度は適用対象者の制限はありません。
≪2≫相続時精算課税制度の適用対象者は、贈与者は65歳以上(平成27年1月1日以後の贈与については60歳以上)の親、受贈者は20歳以上の贈与者の推定相続人で直系卑属である子供(平成27年1月1日以後の贈与については「孫」を追加)です。なお、各年齢は、贈与のあった年の1月1日現在で判定します。

(2)届出

≪1≫暦年課税制度は届出の必要はありません。
≪2≫相続時精算課税制度は届出が必要です。受贈者である兄弟姉妹が別々に、贈与者である父母ごとに選択することが可能です。相続時精算課税制度を選択した場合、相続時まで相続時精算課税制度が継続して適用されます。(一度相続時精算課税制度を選択してしまうと暦年課税制度を使うことができなくなってしまいます。)

(3)非課税枠

≪1≫暦年課税制度は毎年110万円の基礎控除があります。
≪2≫相続時精算課税制度は2,500万円の特別控除があります(2,500万円を限度に限度額まで複数回使用可)

(4)税率

≪1≫暦年課税制度は10%から50%(平成27年1月1日以後の贈与については55%)の超過累進税率で課税されます。
≪2≫相続時精算課税制度は2500万円を超えた部分に対して一律20%で課税されます。

(5)相続時の精算

≪1≫暦年課税制度の贈与財産は相続開始前3年以内のもののみが相続財産に加算されます。ただし、加算された贈与財産に係る贈与税は相続税から控除できます。(還付はありません。)
≪2≫相続時精算課税制度の贈与財産は全額相続財産に加算されます(相続税の課税対象になります)。ただし、すで、に支払った相続時精算課税制度に係る贈与税額は相続税額から控除できます。相続税額から控除しきれない贈与税額については還付を受けられます。
※相続財産に加算される価額は、≪1≫、≪2≫ともに贈与時の価額です。

贈与税暦年課税制度と相続時精算課税制度

→相続時精算課税制度を選択した場合には、相続時まで相続時精算課税制度が継続して適用されます。

①暦年課税 ②相続時精算課税制度
控験適用枠 基礎控除
110万円まで(毎年適用できる)
特別控除2,500万円まで
(限度額に達するまで控除でき、限度額を超える部分については一律20%課税される)
贈与者 制限なし
(平成27年1月1日以後、祖父母、父母から20歳以上の子、孫に対しての贈与の場合には税率の優遇あり。)
親(年齢65歳以上、父母ごと、兄弟姉妹ごとに選択)
(平成27年1月1日以後贈与の場合は年齢60歳以上)
受贈者 制限なし
(平成27年1月1日以後、祖父母、父母から20歳以上の子、孫に対しての贈与の場合には税率の優遇あり。)
20歳以上の推定相続人である子
(平成27年1月1日以後贈与の場合は20歳以上の孫を追加)
贈与財産 制限なし 制限なし
税家 基礎控除額を超える部分に対して累進課税(10%50%)
(平成27年1月1日以後贈与については、10%55%)
特別控除枠2,500万円を超える部分に対して一律20%
贈与税の申告 税額が出る場合は必要 税額が出なくても必要
相続税との関係 贈与後3年経過すれば相続時に相続財産に含めなくてよい 相続時に、贈与財産を相続財産に持ち戻して相続税を計算する
(孫に対する贈与については相続時に2割増しで相続税を計算)